Sunday, June 7, 2020

Amazon.co.jp: 日本人「慰安婦」―愛国心と人身売買と: 瑠美子, 西野, あかね, 小野沢, 「戦争と女性への暴力」リサーチアクションセンター: 本

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田舎の隠居

4.0 out of 5 stars 問題追及の第一歩

Reviewed in Japan on April 12, 2015

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「慰安婦」問題は、朝鮮人が中心に議論されているが、それはそれとして理由のあることだと思う。だからと言って、日本人「慰安婦」についての議論が乏しいことは理解に苦しむ。存命の当事者も少なくなっているが、もっと豊富な資料を発掘できないものか。この本を第一歩として、ぜひ資料を積み上げてほしい。

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つくしん坊

TOP 1000 REVIEWER

5.0 out of 5 stars 多くの史実や聞き書き、現地調査から、日本人「慰安婦」の実像に迫る

Reviewed in Japan on July 30, 2015

昨今のジャーナリズムでは、「慰安婦」問題に関して、朝鮮人「慰安婦」、しかもその「強制連行」の有無という極めて狭い範囲の議論が多い。本書は、多くの史実や聞書き、現地調査から、日本人「慰安婦」の実像に迫ったものである。昨今のジャーナリズムの議論があまりにも矮小化されたものであり、より広い視野からこの問題を捉えることの重要性を示している。戦後70年を経て証言者も少なくなる中、この困難な仕事をやり遂げた「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター(VAWW RAC)の皆さんに敬意を表したい。



本書の「はじめに」にもあるように、日本人「慰安婦」についてはこれまで、「公娼制度下の女性たちが駆り出されたものであり被害者とはいえない」という誤った認識の下にほとんど無視されてきた。これは一部の極右政治家や評論家がしばしば発言する「慰安所肯定論」とも通じている。本書では、このような認識が根本的に誤っていることを実証的に論じている。本書のポイントを要約すると次の通りである(冒頭の、小野沢あかね氏論考による)。



(1)日本人「慰安婦」徴集は軍や内務省の国家機関の命令で行われたことが各種の資料から明らかになっており、国家の責任は免れない。

(2)実際に女性徴集に当たったのは公娼業者や周旋業者などの民間人であったが、当時においても買収目的で女性を人身売買することは国内法や国際条約で禁止された違法行為であった。そのことを実証する判例も存在する。

(3)上記のような経緯で「慰安婦」にさせられた女性はもともと人身売買され、自由を奪われた人たちだったので「自由意思」で「慰安婦」なったとは言えないし、詐欺で徴集された女性もいた。



本書には、上記を裏付ける各種論考が含まれる。強制的な「慰安婦」徴募を誘拐と認定した大審院判決、性奴隷を正当化した戦時ナショナリズム、慰安所業者の聞き取り、沖縄慰安所の事例、日本人「慰安婦」の数少ない実名記録、および匿名の体験記など歴史的記録として貴重である。



戦時の「慰安婦」制度は、戦後の占領軍向け慰安所にほとんど連続的に繋がっていった。さらに、日本人、朝鮮人、中国人を問わず、元「慰安婦」の人びとは、肉体的・精神的後遺症に苦しめられ、激しい恥辱感から故郷に帰れず、幸福な家庭生活とは縁遠いという具合に、戦後も厳しい生活を強いられた。



本書を読み痛感したのは、日本人・朝鮮人・中国人等の「慰安婦」問題の根本には、暴力的・権威主義的国家体制と、全体的な貧しさの中で存在した貧富差により、最底辺の階層の女性たちにしわ寄せがいく、という構造的な問題があるということである。最近の日本の右傾化に伴い、「慰安婦」をめぐる歴史修正主義的妄説や暴論が顕著になってきた。本書は、この「慰安婦」を巡る言説に対して、実証的な視点から解明を行なったものである。なお、「慰安婦」を巡る妄説・暴論に対しては、本書と同じ編者の、「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター編『「慰安婦」バッシングを越えて-「河野談話」と日本の責任』(大月書店、2014年刊)において、研究者やジャーナリストが完璧な反論を行なっている。併せて一読をお奨めする。

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サトぽん

5.0 out of 5 stars 玉の井遊郭の場合

Reviewed in Japan on June 18, 2015

本の帯に、『「売春婦」なら被害者ではないのか』とあるのが、本書の内容を象徴している。おそらく、大半の人は知らないだろうが、「売春婦」でない日本人が、海外で「慰安婦」になることはできなかった。海外渡航に当たって、内地警察がそのような制限を設けたからだ。「売春婦」でない日本人女性が慰安婦であったとしたら、それは警察の渡航証明書を偽造するか、警察をダマして渡航証明書を出させたかどちらかである。むろん、悪徳周旋業者が軍とつるんで、軍用船で渡航させたといった例も存在するだろうが、これは発覚したら犯罪である。慰安所の楼主は、日本人の場合、身元の確かな人間を選んで当てると言う原則もあった。



日本国籍を持った現地在住の女性が、慰安婦となる例も理屈の上からは考えられるが、これも多かったとは思えない。自由意思で身を売るのなら、普通の「娼妓」となることを選んだのは確実だ。慰安婦の一回当たりの接客料金は、内地の私娼か公娼の最下層の金額に抑えられていた。敢えて慰安婦になることを選択する金銭的なメリットは全くないからである。つまり、合法的に慰安婦になった日本人女性は、ほとんどすべて売春経験者であったと言うことだ。もちろん、このことは違法に慰安婦にさせられた日本人が、いなかったと言うことにはならない。



実際、日本人慰安婦女性に、比較的高齢な、職業的な娼婦然としている女性達が多いことは、元日本人慰安婦の証言、兵士の見聞からも裏付けられる。有名なのは、漢口慰安所の管理者であった山田清吉の「武漢兵站」の記述だ。日本人慰安婦女性が、インテリの山田を手玉に取るような言動をし、山田が困惑する様子が読み取れる。



これは、本書にも紹介されている、大林清の「玉の井挽歌」と言う本の中の記述とも一致する。一章を割いて、玉の井の銘酒組合の国井組合長の元に、陸軍から中支に慰安所を開設する依頼が来た話で、内容については、千田夏光の本のレビューを書いた時に少し触れたが、

http://www.amazon.co.jp/review/R3V6N6WOUAQ9NS/ref=cm_aya_cmt?

遊郭と言っても通称で、玉の井は私娼街である。国内での娼婦としての生活に嫌気がさし、軍から無理強いされた国井の必死の説得に応じて、前借金を増額を条件に、一念発起して戦場の慰安婦となることを決意した女性達の話だ。彼女達は現地に着いて、慰安所の前に行列をなす兵士達に驚くが、元々、承知で渡った身であるから、開き直って前借金を返すことに専念する。



戦場に渡った彼女達は、三ヶ月か半年で、すぐに千円以上の前借金を返すことができたという。前借金を返した後、少し余分に働き、廃業後も現地で飲食店を開いたり、完全に足抜けできた例も多いと言うが、慰安所では、相手にする客の数が、内地とはケタが違う。毎日十人程度、土日で三十人程度を相手にすると、多額の借金もすぐに返済できるのは、単純に金額を計算してみれば、まったくその通りなのである。業者の国井にとっても、カスリの率は内地と変わらない条件ながら、客の絶対数が全然違うので、現金はガバガバ入ってきたらしい。



いかにも結構な話と思われるかもしれない。特に慰安婦の実入が良かったと主張する人達にとってはそうだろうが、話にはウラがある。三ヶ月や半年で足抜けされたら、次の慰安婦のリクルートが間に合わない。軍の命令では、慰安婦の確保は業者に義務付けられた絶対条件である。本の中では明記されていないが、日本人慰安婦の追加補充がうまく行ったとは思えない。慰安所で働くことは、福島原発の炉心近くで働く下請け労働者のようなものだ。相手にする数と比例して性病の罹患の可能性も高くなるし、酒を飲んで暴れる兵隊に、刀で斬りかかられたなどと言う話はいくらでもあるのだ。国井は結局、数年で慰安所の経営から手を引くことになる。



つまり、慰安婦を内地を上回る前借金の額を提示して募集をかけたとしても、内地と同じ取り分比率に応じて女性達にカネを渡していると、慰安所システムは絶対に立ち行かない。日本人慰安婦達は、苦労して連れてきても、すぐに足抜けしてしまうのである。



だが、これはあくまで慰安婦達が、「ものを言う」ことができる、日本人女性達であった場合の話である。玉の井の女性達の話は日本人慰安婦の置かれた境遇の一例に過ぎない。団結して楼主に当たることができず、慰安婦として個別に戦地に渡って行った場合、朝鮮人慰安婦と同等の扱いを受けたと思われる例も少なくない。この典型が、千田の「従軍慰安婦・慶子」のモデルとなった女性である。彼女は、日中戦争の開始時から終戦まで、なんの希望も持つことなく、戦局の拡大に合わせて、流されるように各地を転々とする。名乗りでた日本人元慰安婦は、元々が公娼制度の最下層で呻吟していた女性達だから、その体験は、本書に記述されているように、飛び抜けて悲惨な印象を受ける。だが、このような女性、兵士の性欲の処理を、黙々とこなす女性が軍にとって、一番、都合のよい女性であったのは間違いないのだ。問題はそんな女性は、合法的に慰安婦を集めている限り、あまり集まらなかったと言うことなのである。



この軍に都合のよい慰安婦予備軍が、朝鮮人であり、台湾人という植民地の女性であったのは疑いがない。慰安所を多数抱えた沖縄の場合も、日本内地とは事情は異なる。彼女らもまた、植民地の女性達に準じた扱いを受けたと言ってよかろう。



目次をコメントに転記した。内容は扇情的な部分を排した、手堅い論文の集まりで、初心者向けとは言えないが、いずれも、慰安婦問題の研究が進展していることが確信できるものばかりである。

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